メッセージ
当研究室では、これまでは2つの分野であった、衛生学と公衆衛生学が一緒になった領域ですので、それぞれの分野において、実験研究から政策研究まで様々なアプローチを駆使し予防医学の発展に寄与することを目標に研究を行っています。社会医学研究については、立道、古屋、木ノ上が中心となり、立道は、産業保健を中心とした予防医学への展開に関する研究、古屋准教授を中心とした、シュミレーションモデルを用いた感染症の制御に関する研究、木ノ上准教授を中心とした、国際保健に関する研究を展開しています。実験研究は、主に、遠藤講師と大和田助教が中心となり、がんのもつ特殊な代謝経路の解明や酸化ストレスを巧みにあやつるメカニズムの解明を行っています。また、当研究室で40年近く継代されてきた天才ラットTHAを用いた研究を大学院生の志田さんを中心として実施しています。予防医学領域におきましても、基礎研究の重要性を認識し、予防医学の基盤となる研究成果を出していきたいと考えております。それぞれの、テーマや内容に詳細につきましては、研究内容(社会医学研究、実験医学内容)をみていただければと思います。
一つの例を示しますと、人や社会は常に新しい環境に曝露されます。社会医学研究者として、この新たな環境が生み出す未知のリスクに対して備えていくことも重要な使命です。この20年のIT革命によりパーソナルコンピューター(PC)の普及、スマートフォン、タブレット端末の登場により一気にバックライトで照らされた画面を長時間凝視する生活習慣に変貌しました。幼児や学校教育の中でもタブレットの使用が推奨され、幼児期から曝露を受けることになります。その中で、LED光のブルーライトの問題も新たな健康障害を生む可能性が言われておりますが、我々は、紙媒体の間接光の曝露から直接光の長時間曝露によって視神経の老化が進み、緑内障などの変性疾患のリスクになるのではないかという知見を世界に先駆けて発表しております。また、身体活動のすくないセデンタリーライフスタイルは、様々な健康影響をもららすことが推測されています。現在は、大規模な疫学調査を職域において実施中でそのリスクやメカニズムを科学的に実証することを計画しています。
社会医学は、研究の成果を大多数の方に還元することによってその使命を果たすことになります。そのため、基礎的なメカニズムの解明や、エビデンスの作成だけに留まらず、社会に還元する仕組み作りも同時に行わないといけません。その仕組み作りの方法論をベンチからベッドサイドへそして、行政施策へと展開することを検討しています。
このように、予防医学を主とする本研究室は、様々な領域から多種多様なバックグランドを持つ人の力を必要としています。医療系以外の出身の方でも、文系出身の方でも予防医学に興味がある方は、どなたでも力を発揮できる分野であり、当研究室は大歓迎です。是非ともご連絡下さい。
基盤診療学系衛生学公衆衛生学 教授
立道 昌幸