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研究内容

研究テーマ:がんの微小環境に着目した適応機構の解明と進展予防法の確立

研究内容:1981年以来、悪性新生物は死因の第一位であり、死亡率や罹患率の減少と最終的ながん克服を目標とするためには、超高齢化社会に突入する現在において、より一層の努力と対策が急務です。これまでの基礎研究の集積によってがん本態の解明は進み、がん原遺伝子、がん抑制遺伝子の発見に代表されるように、がんの発症、増殖、生存、進展機構において分子レベルでの理解が飛躍的に広がりました。しかしながら、

  1. がん関連遺伝子の変異やそれに伴うシグナル伝達経路の活性化は、非常に複雑であること
  2. がん化には膨大な点突然変異、遺伝子転座、増幅、欠失が伴うこと
  3. 発生場所や病理学的特徴には遺伝子変異との関連性が低いこと
  4. エピゲノムやnon-coding RNAの異常ががん化や進展に深く関わること

などの知見が次々と得られてきましたが、これらの知見はがん研究の難しさを改めて感じさせるものとなりました。これからは、これまでとは少し違った角度からがん細胞と向き合い研究する必要性があるとも言えます。

がん細胞は、正常細胞とは全く異なる微小環境に囲まれて生存しています。また、多くの固形腫瘍の内部は細胞が急速に増殖するが故に代謝要求性が非常に高く、組織中心部は慢性的に低酸素/低栄養状態に陥っていることが分かっています。すなわち、がん細胞は特有の微小環境に耐えながらの生存及び進展を余儀なくされています。一方で、がん細胞の高度な増殖により必然的に生み出される低酸素・低栄養環境は、がん細胞の悪性形質獲得(浸潤・転移、血管新生など)にとって重要な因子であると理解されつつありますが、どのようなシグナル伝達機構により制御されているのかなど十分には解明されていません。
興味深いことに、がんの発生場所(がん組織部位)が異なったとしても、がん細胞は共通の表現型を示します。つまり、がんの微小環境に着目することで、がんが何故共通の悪性形質を示すのかといった理解につながり、がんの進展を抑制させる手掛かりを得られるのではないかと考えています。

私たちの研究室では、上述の内容を踏まえ

  1. がん微小環境ストレスの適応と悪性形質獲得機序の解明
  2. 低栄養環境下におけるフリーラジカルの発生機序と酸化ストレス制御
  3. 足場非依存環境が惹起するがん細胞生存シグナルの解明

をメインテーマとしています。(図1参照)

図1

がんの微小環境適応メカニズムを解明すべく、エネルギー代謝シグナル、酸化ストレス制御、オートファジーをキーワードとし、様々なシグナル伝達経路の関与を検討しています。がん細胞ががん細胞として生存していくためには、過酷な環境に高度に適応する必要があります(図2参照)。がん細胞が曝される「環境」に焦点を当て研究することは、がん研究のみならず環境と生体の相互作用を理解する基盤となるため、未来の予防医学研究が発展する上で重要な取り組みであると思っております。

私たちは、予防医学のマインドを持ってがんの微小環境に着目した新規の「がん進展予防法の確立」を目指しつつ日々研究に取り組んでいます。

図2

研究テーマ:Tokai High Avoider (THA) ラットを用いた高次脳機能へのアプローチ

研究内容:重田定義(現:東海大学医学部名誉教授)らが中心となり、Wistarラットを用いてレバー押し回避学習試験において高回避能力を示すphenotype(表現型)同士を選抜し、繰り返し兄妹交配を行うことで近交系を確立しました。素晴らしいことに、高回避能力のphenotypeは近交系の確立とともに受け継がれ、生得的に高回避能力を示すTokai High Avoider (THA) ラットの系統樹立に至りました (図1:THAラット樹立の流れ)

図1

THAラットは、微量化学物質曝露による中枢神経系の次世代影響を評価する目的で作成されました。従来の実験動物を用いた次世代の高次脳機能評価方法では、出生前の学習レベルは未知であり、かつ出生後の学習能力は個体差が大きいために、化学物質曝露による次世代の中枢神経系への影響を正確に評価することは不可能でした。一方、THA ラットはこのような問題を全て解決しているため、重金属 (Tokai J Exp Clin Med, 1986)、アルコール (Environ Health Prevent Med, 1996)、環境汚染物質(Industrial Health, 1986, Jpn J Clin Ecology, 2001)など微量曝露による次世代の学習機能への影響を初めて検出、解析を可能としてきました(図2参照)。これまでの研究結果から、THAラットは、生まれながらに高い学習能力(高回避能力)と安定した情動性を示すこと、並びに個体差が極めて小さい実験動物であることが証明されています。

図2
図2

このようなモデル動物は、世界中でも非常に希有であり、単に「化学物質曝露のスクリーニング動物」として活用するだけにとどまらず、これからの「脳神経科学研究にとっても非常に有用なモデル動物」になりうると考えております。現在では(2015年8月現在)、113世代を超えており、THAラットの系統維持には多く方々のサポートがあったからこそ、今日まで一度も絶やすことなく管理し続けることが出来ています。

THAラットを用いた主な研究テーマは、

  1. THAラットの高学習能を規定する分子メカニズムの解明
  2. 子宮内環境と高次脳機能との分子連関
  3. 高学習能にとどまらないphenotypeの探索とその応用

THA ラットは、100世代目を超える現在に至るまで、30年以上の長い時間をかけて進化というフィードバック機構を通して、高回避能力(高学習能力)を自身の遺伝情報に定着させてきました。THAラットの分子基盤に記述され、保存されてきたgeneticおよびnon-geneticな言語を紐解くことこそが、学習や記憶機構のような高次脳機能の本質を解明することに繋がると信じています(図3参照)。また、THA ラットは遺伝子改変に伴う代償作用は存在しないため、高次脳機能研究における新展開を可能にし、全く新しい視点からの精神・神経疾患に対する創薬の創出が期待されます。

以上のように、THAラットは貴重な研究ツールとして無限の可能性を秘めており、衛生学や予防医学のみならず、様々な研究アプローチに活用することで医学研究を支えていきたいと思っております。

図3
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