社会医学 研究内容
社会医学研究ユニットの研究内容
責任者 立道昌幸
本研究室の社会医学研究ユニットとしては、社会医学分野における、科学的根拠の形成と実践活動をその理念にしています。主に職域における健康管理、健康維持、増進をテーマとして、疫学的手法を用いて科学的根拠を検証し、この知見を広く発信していくとともに、実践するための手法を開発して還元することを目標にしています。
現在のように高齢化社会、70歳まで働く時代になり、若年時代、中高年齢層にて一貫した健康維持、増進が必要であり、予防医学の重要性が益々注目されています。今後の、医療経済的にも、本人のQOLを保つためにも、注力を結集する必要があります。
1)新たな健康障害の予見と予防
特に21世紀に入り、作業環境や生活環境は顕著な変革がありました。PCは一人数台の時代になり、スマートフォンなどを凝視する時間が劇的に増加しています。この生活環境の変化により、身体活動量が減り、セデンタリーライフスタイルの問題がクローズアップされています。この劇的な環境変化による健康影響をいち早く実証し、予防する手段をとる必要があります。
2)産学連携の強化
今後の予防医学政策の後押しとしては、行政施策や本人の自己努力だけでは困難で、健康産業がこの分野に多数参入する必要があります。しかし、ほとんどがエビデンスのない状態です。今後は、まさに産学が連携しながら、質の高い健康産業を育成することが、アカデミアとしての役割であると考えております。さらに、これらの新たな医療技術が出てくると、その費用対効果の分析が非常に重要になります。今後、様々な医療技術における費用対効果の分析にその専門家と連携しながら、着手する予定です。
3)職域での健康管理の活性化を目指したエビデンスの構築と実践法の開発
職域での健康管理の中心となる産業医の職務拡大に伴う、様々な支援の在り方についても検討しております。平成最後の年に改正労働安全衛生法が施行され、産業医の独立性や中立性がより一層重要になり、また、その資質が問われています。そこで、産業医や産業保健職の資質向上に関する、あるいは、産業現場で使えるツールやエビデンスの形成を目標に活動しております。
4)AI等、あらたな解析手法を用いたビッグデーターの社会還元に関する研究
現在、社会では様々なビッグデータが利用可能になってきました。がん登録のデータ、レセプトデータ、健診データ、入院データ、DPCデータなど様々なデータが存在し、それをいかに解析して社会に還元するかの方法論の構築が急務な課題になっています。当研究室でもこれらのデータを積極的に扱い、ビックデータの解析により、予防医学に貢献したいと考えております。
現在の社会医学研究ユニットにおける研究テーマは
1)「健康診断結果の経年変化に視点をおいた望ましい健診結果の活用と事後措置のあり方に関する研究」
労災疾病臨床研究事業費補助金
2)「職域等も含めた肝炎ウイルス検査受検率向上と陽性者の効率的なフォローアップシステムの開発・実用化に向け
た研究」 厚生労働科学研究費補助金
3) 職域でのがん治療と仕事の両立支援に関する研究(厚生労働科学研究費補助金
4) PC利用やスマートフォンなどICT機器使用と緑内障発症との因果関係に関する疫学的研究(日立健康管理センタ、
東京慈恵医大眼科との共同研究)
5) FDT視野計とOCTを用いた、緑内障検診のプログラムの開発 (慈恵医大眼科との共同研究)
6) OCT結果を利用した認知症予測と予防に関する研究(日立健康管理センタとの共同研究)
7) 労災病院入院病歴DB(10年間の全労災病院の入院時の職歴と入院時のサマリーDB)を用いた、「職業と疾病」
に関する研究(労災疾病臨床研究事業費補助金)
8) 音楽を用いた時間外労働抑制に関する研究(㈱USENとの共同研究)
9) 郵送健診を用いた行政施策の研究(和歌山県との共同研究)
10)タイ従業員におけるウエアブル端末(Fitbit)とキュアサインを用いた健康増進効果の検証研究(富士フィルム㈱
との共同研究)
11)国立がん研究センター JPHC研究 (津金昌一郎先生代表)多目的コホートにおける胃がんとSNPの関連研究
12)主に消化器疾患における臨床疫学的研究 (東海大学医学部消化器内科、けいゆう病院、東京都済生会中央病院)
などがon goingで動いている研究テーマです。これら研究以外にも、「職域でのがん対策普及に関する」社会啓発活動を行っております。
今後も多数の企業や研究者と連携しながら、社会医学領域の研究を進めていきたいと思いますので、これから健康産業に乗りだそうとする企業や、社会医学研究に興味のある方は、是非一緒に研究してみませんか?
バックグランドはともかく、社会医学、予防医学に興味のある方は大歓迎です。
連絡先 衛生学公衆衛生学 教授 立道昌幸 tatemichi@tokai-u.jp